美しく/美味しくするコツ

基本の作り方1について
このように全ての材料を一度に混ぜて生地を作るストレート法と比べて、 Vorteig(フォアタイク =前生地)を作ってから生地を作る方法で出来たパンの方が、風味が良く、長持ちします。

Vorteigというのは、粉分量の30%程度、同量の水、わずかなイーストを混ぜたものです。

この糊状のものを2~8時間置いておきます。

ちなみに、8時間おいておくとVorteigの中のイーストは細胞分裂して、3倍に増えると言われています。 この間に、小麦粉の中の澱粉とたんぱく質は十分に水分を吸って、後の本生地に弾力を与え、 粉の旨みが引き出されます。また、イーストの活動により、発酵アロマが加わることになります。

室温の違い等により、放置時間は異なりますが、以下のようにVorteigが最大に膨らんで、 しぼんでしまう直前直後が、Vorteigが熟成した時、つまり「使い時」と言われます。


Vorteigの中でイーストが増えていますので、本生地のイースト量を減らします。 以下の材料を捏ねます。

基本の作り方2について
出来あがり生地の温度が28℃くらいになるようにするには、水温を調節します。

ストレート法の場合は、目標生地温度×3-粉温度-室温=水温
Vorteigを使う場合は、目標生地温度×4-粉温度-室温-Vorteigの温度=水温

と、このような論理は有名ですが、捏ねている間に生地は温まりますし、 温まりすぎると生地の老化が早まってしまうので、計算で出てくる水温より少し低めにした方が良いです。

基本の作り方3について
生地を休ませる理由は、生地の緊張をほぐすグルテンが更に回りの水分を取りこんで、生地のべたつきを抑える生地を最低限熟成させる

経験から言わせてもらうと、生地を休ませることによって、柔らかい生地はしまり、 固めの生地は緊張緩和と熟成により、柔らかく扱い易くなるように思います。 ただ、上にも書きましたが、温かすぎる生地はアミラーゼ(酵素)の活動が活発になることもあって 休ませている間にどんどん老化し、逆に扱いにくくなることもあります。ですので、水温は心持低め、これを守ってください。

基本の作り方4について
ガス抜きをする理由は、生地の中の気泡を粉砕するためです。
「せっかく少し膨らんだのに・・・」なんて思ってはいけません。膨らんだ生地をつぶしても、中の気泡は消えません。 むしろ、大きな気泡が小さく小さく粉砕されるのです。
こうして出来たパンのきめは細かくなりますし、焼成時パンが膨らむのは、イーストの活動の他に 生地の中の空気が膨張するという一因もあるのですから、気泡が多い方がパンはきれいに膨らむのです。 下の写真のように、カイザーゼンメル(シュリッペも)は、模様部分を下にして発酵させ、 焼く直前にそ~っと天板に載せます。

基本の作り方5について
パン生地に水分を吹きかける理由は、固い皮の形成を遅らせるためです。 水分がついている間は、生地表面は100℃を超えず、弾力性を保ちます。

オーブンに生地を入れて体積が膨張していく過程で、すでに固い皮に覆われていては、 結局、出来あがったパンは、焼成前の大きさと大して変わらないことになってしまいます。

基本の作り方6について
生地がオーブンの中で焼かれている間に、澱粉の一部はアミノ酸によって グルコース(単糖)に分解されたり、熱によってデキストリン(多糖の混合)に分解されて、 香ばしい匂いや美味しそうな焼き色をつけます。

焼きあがりのアツアツのパンに、霧吹きで水分を与えて急激に温度を下げると、 糖が結晶化して、パンの表面に光沢が出ます。