私の弟子修業時代

私はドイツ人の夫との結婚を機に ドイツへやって来た訳ですが、結婚式とその後片付けが終わって、気づきました。 
「これから何しよう・・・」と。
なんせ、それまでは東京でバカみたいに朝から晩まで、時には徹夜までして働いていた身。当時は、「家でのんびりしたい」 と思っていたのに、いざそれが実現すると、「退屈で死にそう」 と、なってしまったのです。

東京の会社では、いろんな仕事をやらせてもらっていましたが、一番多かったのが、会計・総務の仕事でした。でも、その仕事が好きだった か、と言うと実はそうでもありませんでした。ドイツに渡るということで、何かの役に立つかと思いアメリカ会計のコースを受講したこともありましたが、やっ ぱりどうも向かないようで、飲み込みはすこぶる悪かったのです。

ベルリンでも仕事がしたいなー、と思った時には、一応経験のある経理の仕事を最初に思い浮かべ、私立のビジネススクールのパンフレット を取り寄せてみたりもしました。しかし、内容や受講料を見れば見るほど、「本当に私はこんな事したいんだろうか?」と、考え込むようになりました。

うちの夫の仕事は、コンピューターエンジニアです。今はドイツに住んでいますが、今後もずっと住むとは限りません。もしも今から、ドイ ツの会計を勉強して職にありつけたとしても、別の国に引っ越した場合は用語など、また最初から勉強しなおしです。それも、ただ経験があるだけで特に好きな 仕事ではないとしたら、これはもう地獄としかいいようがありません。考えれば考えるほど、「こんな事するなら、家で暇してた方がマシ!」 という結論にしか至りませんでした。

「私が本当にやりたい仕事って何なんだろう・・・」 と主婦になって初めて考えてみたのでした。こういう事を、高校生の時にちゃんと考えていればよかったのにねー。周りに流されてなんとなく大学に行って、特 別な思い入れもないのに会社で延々と働いたり、長く付き合ったからって結婚してドイツに来たり・・・・って、いえいえ結婚はちゃんと考えてからしてます。 ご 安心を!(笑)

私の母は友の会の会員で、料理講習会で習ったものを家でよく作ったりしていました。そんな訳で、私は小学生の頃から、母のレシピブック を見ながら、近所の福引で当てた小さなオーブントースターでクッキーを焼いていました。もちろん、料理も大好きです。特に誰かに食べてもらえるとなると、 もうやる気まんまん!ドイツに来てからも、日本食が恋しいとはあまり考えたことはなく、ドイツにある食材で夫がリクエストするものをレシピブック片手に挑 戦するのは楽しくて仕方がありませんでした。

そう、私の好きなことは料理を作ることや、お菓子を作ることです。せっかく勉強するんだったら、料理やお菓子が習いたいと思いました。 しかし、ドイツ料理といってもソーセージや塩漬け豚など、お肉屋さんで材料を購入して、家で茹でたり焼いたりするだけのものしか思い当たりません。色で 言っても、茶色いソースぐらいしか頭に思い浮かばないくらい、なんだか野暮ったい感じです。ドイツのお菓子というと、焼き菓子が頭に浮かびましたが、それ なら、レシピブックを見たら結構自分でもイイ線のものが作れます。しかし、ドイツパンだけは、レシピを見てもカチカチのまずいものしか作れなかったです し、毎日行くパン屋さんでもたーーーくさんあるパンの種類に圧倒されつつ、名前がわからない為に毎日同じようなものばっかり指差して買ってしまうなど、悔 しいことばかり。よーし、いっちょドイツのパン作りを習ってみるかー!と思ったのです。

しかし、この時点でパン職人になろうという考えは全くなく、「カルチャースクールに通って、パン作りを習うんだ~♪これで暇つぶし!」 程度にしか考えていなかったのです。
嗚呼、お気楽主婦だった私。神経をすり減らし、汗水たらしてお仕事されてる皆様ごめんなさい。