アルザス食探訪 2(上)

去年のアルザス旅行が楽しかったので、今年も3泊4日の日程でレストラン&ワイナリーめぐりをすることにしました。 前回は Colmar に宿を取りましたが、街の中のホテルは質の割りには高くてあまり良い印象がなかったし、あの辺りの有名な村や町は車があると すぐに回れてしまうので、今回は Riquewihr と Eguisheim に宿を取りました。

今回は、ダンナの幼稚園時代からの大親友の歯科医Dと奥さんのAも金曜日の仕事を終えた後、ドイツから やってきました。義父母同様、フランス国境に比較的近いところに住んでいるとはいえ、ダンナの実家あたりの人は Strasbourg など アルザスの北の方にはよく行くことはあっても、Colmar まで南下してくることはほとんどないんです。それでも、二人は18時まで仕事をして、 20時に予約しておいた Eguisheim のレストランに遅刻せずに現れましたよ。スイスからでも、バーゼルの国境から Eguisheim までは、たったの 60km。フランス人にとって、アルザスのワインの銘柄や地名は覚え難いらしいと本には書いてありますが、ドイツ語の分かる私達には、発音が正しいのかは 定かではありませんが、 逆にすごく覚えやすいので、親しみを感じやすい場所。これを読んでくださっている在独、在スイス、またはドイツになんらかの関わりのある方に、とってもお 薦めの場所です。

Hotel a l’Oriel

2005年4月14日(木)
いろいろやることがあって、お昼頃やっとツークの自宅を出発し、途中のバーゼルでレバノン料理でランチした後、15時半ごろやっとフランスへの国境を通過 しました。
それでも17時前には 、Riquewihr の Hôtel L’Oriel にチェックイン。 16世紀に建てられた建物なので、階段や廊下などが特に狭くて歩くたびにギシギシと鳴りますが、フランスらしくて可愛いらしいというか、物がごちゃごちゃ あってキッチュというか(笑)、ドイツ語圏からくると「フランスだな~」と思える愛嬌のある内装や小さな中庭のあるホテルの作りに感激しました。

リクウィール

ここはワイン畑に囲まれた小さな古い町なのですが、外に出てみると観光客がいっぱいで、道の周りもおみやげ物屋さんや、日本の観光地に も ありがちな、ちょっと安っぽい店頭販売のご当地名物のお菓子屋さんやワイン屋さん・・・という店が軒を並べていました。綺麗な町なんですけど、なんだか ちょっと観光地化されすぎてるような気がして 少し興ざめしました。
それにしても、今年のイースターは3週間前に終わり、宗教上は50日後 の聖霊降臨祭まで続くとはいえ、ドイツ語圏ではイースターの 祝日が終るとすぐに卵やウサギの飾りなどは取り外してしまうのですけど、ここ Riquewihr をはじめ今回訪れたアルザスでは、ホテルの中や町の家々の窓に イースターの飾りがまだまだ沢山飾られていて、春の陽気とあいまって外の雰囲気を明るくしていました。

夜は緑ミシュランでお薦めになっていた、Le Sarment d’Or というレストランへ行きました。掃除の行き届いた店内は 、一見高級そうに見えますが、意外にくつろげる雰囲気で、サービスも悪くなかったのですが、特に印象に残るお料理では ありませんでした。ただ、アペリティフでいただいたクレモン(アルザスのシャンペン)が辛口ですっごく美味しかったのです。 グラスに注いでくれた時に「Bucherです。」と言われたのを幸い覚えていて、翌日 Riquewihr を発つ時に偶然Bucherの ワイナリーの前を通りかかったので、例のクレモンを買うことにしました。ワイナリーと言っても、外から見ると 自宅の車庫みたいな場所(中は広くて倉庫みたいでした)で生産者のおじさんが自分で売ってるところだったのですが、 一本たったの6,50ユーロ。昨日は確かグラス一杯でそれぐらいのお値段だったと思うのですけど。朝っぱらからお客さんと、 一緒にワインを飲んでるおじさんは陽気に赤ら顔で、「クレモンはシャンパンほど有名じゃないから値段は半分ぐらいだけど、 味と品質は同じぐらいなんだよ。」と、私達はもう買うって言ってるのに、「飲んでみろ、飲んでみろ。」と薦められました。 「昨日、レストランで頂いて美味しかったから買いに来たんですよ。」と言ったら喜んで、「そうだろ~。私が作ってるから 美味しいんだよ。」と自信満々でした(笑)。

Earl Bucher Jean-Luc  
6 avenue Méquillet, 68340 Riquewihr
tel: 03 89 47 92 38

フェルベールのジャム
フェルベールのお店

2005年4月15日(金)
 これから芽を出して葉を繁らす準備の整ったワイン畑の広がる景色の中をドライブしながら、Niedermorschwihr という小さな村に立ち寄りました。ここは、かの有名なクリスティーヌ・フェルベールさんのお店のある所です。 村の駐車場になっている小さな広場には「Place Fuji-T.V.」なんていう名前がついていて、「フジテレビが 以前、大々的に取材に来たのかしら?商業主義っぽい雰囲気のお店なのかしら?」と一瞬、不安に思ってしまったのですが、 それは杞憂に終わりました。
お店は見るからに手作りの個人店という感じの質素な 雰囲気を醸し出していて、店内の片隅に 小さな招き猫が置いてあるのが、唯一「こんな田舎まで日本から訪ねてくる人がいるのね~」と思わせる程度。 有名なジャムを前面に押し出した売り方っていう訳でもなくて、ドイツ風な感じの素朴で、でもやっぱりフランスらしく 可愛らしいアレンジの効いたケーキやパン、キッシュ等と共に、店内の雰囲気に馴染んで沢山の種類のジャムが並んでいました。 フルーツのジャムのほか、各種アルザスワインを使ったものや、トマトや人参のジャムなどもありました。 人を訪ねる時の手土産などに良さそうなので、た~くさん買い込んできました。

Christine Ferber  
18 rue des Trois-Epis , 68230 Niedermorschwihr
tel: 03 89 27 05 69

 お昼はダンナ実家のお向かいさんのお薦めのレストラン、Aux Armes de France へ行くことにしました。お向かいさんのご主人は、 時々集まっては豪華な食材で豪快に「おとこの料理」をしたり、有名レストランへ皆で食べに行くという「グルメなおじさんサークル」に所属していて情報が豊 富なの で、先月ダンナが実 家に帰った時にお薦めなどを聞いてくれていたのでした。

おじさんによると、レストランの中はミシュラン一つ星のホールと普通のレストランのホールに別れていて、サークルの旅行で行った時には 普通の方で食べたらしいのですが、参加者一同「普通の方でも十分美味しい!」という結論だったという 話でした。お店の前に立ってメニューを読んでみたら、すごく美味しそうで、しかもランチメニューは前菜、メイン、デザートが3種類ずつあって、 好きなように組み合わせられるコースで25ユーロ、更にグラスワインとミネラルウォーターをつけた場合は30ユーロという、 とても良心的なお値段設定になっていました。お昼は星付き、無しに関わらず同じホールで対応するようで、入り口で どちらに入るのか、などの質問はされませんでした。メニューをよく読んでみると、ランチメニューには載ってないお料理に 食べたいものを見つけてしまったので、普通のメニューから食べたいものを前菜、メイン、デザートで注文することにしました。

<entree>ダンナは近くのお肉屋さんが作ったという「マルグリットおばあちゃんのソーセージ」を、私は季節柄 アスパラガスのスープにしました。きちんと調理されて出てきたダンナのソーセージは、見た目にもすごく美味しそうで、 ダンナもお店の人に「どこのお肉屋さんですか?」と思わず聞いてしまったほど美味しかったそうです。
私のアスパラスープは、 「ほんっと、アスパラガスのスープって意外と難しいのよね・・・」とまたしても思ってしまったぐらい、まあまあで残念でした。 去年5月のオーストリア旅行では、どのレストランでもアスパラガスのスープを頼んだ私、帰りがけのバイエルンでも 頼みましたが、どこのもイマイチでがっかりし通しだったのです。しょっぱすぎたり、懲りすぎててアスパラガスの味が 死んでたり。今回は白アスパラの時期には少し早かったのと、やはり「ドイツ名物」のアスパラをフランスで頼んだのが ダメだったのでしょうか。期待したのに残念でした。今までで一番美味しかったのは、意外にもダンナ実家 近くの中高級な家庭料理のレストランでした。「料理の作り置きはしません」がモットーのお店なので、注文してから お料理が出てくるまでかなり待たされたり、日によって味にムラがあると義父母は言いますが、私が数回行った限りでは いつも素材の味が生きてて、美味しいお料理を出すお店だと思っています。

<viandes>二人とも「豚ロースのグリエ、ビールのカラメルソース、シュークルート添え」というのを 頂きました。 豚・ビール・シュークルートとドイツっぽい食材ですが、アルザスのこんな素敵なお店でどんな風に出てくるのだろう、と 思っていたら、もう見た目からすっごく洗練されていて、とにかくお皿にのっているもの全てが美味しかった!お肉は 柔らかくて甘いビールのソースとすごく合っているし、シュークルートは酸味が押さえられていて変に際立った味じゃないし、 キュウリのピクルスを極小に刻んだものとマスタード、そして茄子がペースト状に混ぜてあるものが添えられており、 付け合せのじゃが芋とグリルされたきのこも風味豊かで美味しいし、全体的に少し甘い感じに仕上がっているお料理でしたが、 とにかく二人で大感激したのでした。

<dessert>私のライスプディングは、沢山のイチゴとピスタチオ、そして柑橘系のソースで飾ったものでした。イチゴが酸っぱすぎ るということもなく、メインのお肉の時に思ったのと同じように、全部の調和が取れてて、どこを食べても美味しいんです。このライスプディングは、作るのに 時間がかかるために、料理の最初に注文しなければいけないものだったのですが、出てきた部分はほんのちょっと。もっと炊いたはずっ!残りも食べたい~!と 意地汚い私は思いました。
ダンナは、地元産ゲヴュルツトラミネールのシャーベット。シャーベットがテーブルに置かれた後、ウェイターのおじさんが上からドボドボと更にたっぷりのゲ ヴュルツトラミネールの蒸留酒である Marc de Gewurztraminerをかけてくれるのですが、そのかけ方があまりにも豪快なので、ダンナはその後の運転を気にして途中で「もう結構です」と止め るほどでした(笑)。 こちらも香りがよくてとても美味しいシャーベットだったそうです。

以上の他、お水、グラスワイン、コーヒーを頼んで、二人で約75ユーロでした。今回の旅行で一番気に入ったお店が ここでした。ここは宿泊もできるので、次回はもっとお酒も楽しめるように宿泊付きで食事に来たいと思いました。

Aux Armes de France  
1 Grand’Rue , 68770 Ammerschwihr
tel: 03 89 47 10 12

アルザス食探訪2(下)」に続きます。